私のお勧め本

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私のお勧め本

256「喫茶おじさん」

2024年05月14日石塚正寛

著 者  原田ひ香
出版社  小学館

 本屋をブラブラしながらタイトルに惹かれて本書を購入しました。早期退職して喫茶店を開店するのですが半年で倒産。その後家族からは見放され、特に妻からは「何にもわかっていない人なんですね。」と憐みと蔑みに似たような言い方をされてしまいます。再就職のあてもない中、それでも唯一の趣味である都内の喫茶店巡りをしながら、おいしいコーヒーとサンドイッチの「食レポ」が記されており、実在のお店(だと思います)の様子が読者に十分伝わります。「喫茶店経営の失敗と無職」といううしろめたさを感じながらも、いつも「いい人」でありたいと振る舞う中高年の悲哀も少し感じてしまう一冊です。

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255「高学歴難民」

2024年05月01日石塚正寛

著 者 阿部恭子
出版社 講談社現代新書

 人権派と言われる識者の中には「高学歴難民」が生まれる背景を「社会のせい」にする方がいますが、当然ながら「高学歴」が悪い訳ではないことは明らかです。そんな中、これまで多くの高学歴難民への就職支援を行ってきた著者は、20名ほどの高学歴者の葛藤や苦悩さらには心の闇にスポットを当ててはいますが、憐みや共感の思いとは一線を画して「高学歴が人生の成功を妨げるのか?」と、読者の判断を求めている一冊ではないかと感じました。

 

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253「中国戦狼外交と闘う」

2024年04月14日石塚正寛

著 者  山上信吾
出版社  文春新書

 前駐オーストラリア(豪州)特命全権大使だった著者は、特に在任中の中国との関係について詳しく述べています。豪州がコロナ発生の原因究明を中国に求めた所、ワインなど「対中輸出品」に膨大な関税などの制裁措置を突然課せられました。このような中国の「戦狼外交」は豪州だけではなく世界の各国にも向けられている中、それでも日本の国益のために中国関係者と対峙してきた著者の思いが克明に記されています。日本の報道では知り得ない中国の「強気と弱気」などが具体的に紹介されており、非常に興味深い一冊です。

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252「奔流」

2024年03月30日石塚正寛

著 者  広野真嗣
出版社  講談社

 コロナウィルス感染による今回のパンデミックにあって象徴的な存在だった尾身茂氏は、時にはさまざまな批判を受け、また政府から疎まれたこともありましたが、一方では国民に苦痛を強いる内容の発信は尾身氏に任せるといったように、政権中枢は尾身氏を都合よく利用したこともあったようです。「コロナ禍」と言う危機的な状況下での政府と専門家との緊迫したやりとりを具体的に記すと共に、この数年間における政府のさまざまな「不作為」を著者は指摘しています。

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251「新聞は偉そうに嘘をつく」

2024年03月18日石塚正寛

著 者  高山正之
出版社  新潮社

 本書は週刊新潮に連載のコラム「変見自在」を再編集したものです。著者は特派員として駐在した経験から、イランを始めとして他国の特異性などを紹介しています。また実際に報道された記事内容を挙げながら、「日本の良心」を自認する全国紙A新聞の、ある国に忖度する報道姿勢や、過去において何度も捏造記事を配してきたその企業体質を鋭く指摘し、新聞記者としての矜持や役割について記しています。